いい小松菜ができるまで~農家のこだわりとその育成方法とは?

東京の小松菜農家

いい小松菜を作っている有名産地と言えば、やはり小松菜発祥の地、東京都江戸川区が挙げられるでしょう。東京23区内で農業を営まれていることも驚きですが、その数は300戸にも上り、その多くが小松菜を生産しています。先祖代々の土地を守り、ルーツは古く江戸時代から続いているという農家さんも多く、農地を守りながらプライドを持って小松菜栽培に携わっていらっしゃいます。

江戸川区は海に近いこともあり、土壌に多くのミネラル分を含み、水はけも良いので、美味しい小松菜を生産するのに適しています。若い作り手さんの中には、自身の農園の名前をパッケージに明記し、ブランド化を図っている方もいます。除草剤を極力行わず、肥沃で元気な土から作られた安全な小松菜は、苦味やえぐみが少なく、サラダとして食べられるものもあります。近隣の高級スーパーやで都内の百貨店などに卸され、年間を通じて安定した美味しさのブランド小松菜を供給しています。

 

東京都内で農業を営む工夫

東京のような比較的狭い土地での農業は、多様なニーズに応えるべく、いろいろな品目の作物を少しずつ生産している農家さんがほとんどですが、江戸川区ではハウス栽培で小松菜だけを生産されている農家さんも多数あります。小松菜は生育が早く、季節によって収穫できる時期が若干異なりますが、約30−70日ほどで収穫できるため、一つの畑で年間6−8回ほど作付けすることができます。小松菜を収穫したその日のうちにその土地を耕し、次の種付けを行うこともあるそうです。限られたスペースで、最大限に収益を出すためには、高速回転と作業効率、生産性が重要となります。

作業性をよくするために、土に赤土をまぜるなどの工夫をされている農園もあります。赤土を混ぜることで、収穫の際に根っこから土が落ちやすくなるのです。小松菜は美味しく、栄養価も高い人気野菜ですが、葉や茎が柔らかく折れやすいため、出荷に際して袋詰めをする際に手間がかかります。また、根っこに土がたっぷりとついていると、それを取り払うだけでもさらなる作業が必要となります。作業効率を上げることは、一人当たりの収益性を上げることに直結していきますので、農家さんの収益も上がるというわけです。

ブランド野菜は美味しいということはもちろんのこと、見た目も美しい状態で出荷することで市場価値が上がります。都心での栽培ということで、豊洲市場や近隣の市場に出荷することが可能となり、乾燥に弱く、鮮度が大事な小松菜にとっては流通の面でも大きな利点となるのです。

 

美味しい伝統野菜を都心で作り続けるため、農家さんたちは惜しみない努力を続け、様々なビジネスモデルも生まれています。スーパーや百貨店の売り場で目にする野菜には産地が記入されていますので、今後、東京江戸川区産の小松菜を見つけた時には、少し農家さんの歴史や努力、そしてプライドに思いを馳せてみるのも楽しいに違いありません。